ブログ「子育て科学日記」

みちのくおもひで紀行

こんにちは。

地球はこのまま溶けてしまうのか?!と本当に不安になる暑さですね。皆様、生き延びていらっしゃいますか?

私は週末、八戸に行ってまいりました。たぶん向こうの気温も30℃はあったと思うのですが、関東から移動したら、全然暑くない!のが感動でした。それに加えて、とても温かいお客様のおかげで、気持ちよく、楽しく話をさせていただけたのも嬉しかったです。ありがとうございました。

何年か前から何度か「おいで」と八戸の方からお招きいただきながらも、なかなか日程調整がつかず、残念な思いをしていました。行きたくて行きたくて仕方ない理由、それは、「住んでた街だから」。

そうなんです、たぶん幼稚園の年長のころ、ほんの数か月だった気がするのですが、確かに八戸在住でした。父が八戸の病院の勤務医(のピンチヒッター?)として働いていたためだと思います。暑かった記憶があるので、夏でしょう。新幹線の駅があることに戸惑いながら、八戸に降り立って私は愕然としました。「そうか、文字通り半世紀ぶりの来訪なんだ・・・」全く、何一つピンとくるものがない、最近よく見かける「突然新幹線通ることになってびっくりしたなこりゃ」的な急ごしらえの新品駅舎です。

嬉しい、懐かしいと勇んでやってきたものの、半世紀もたったら、それは町並みも変わりますがな。しかもそもそも空間認知弱い私の5歳の時の記憶なんざ、なんの手がかりにもなりゃしない。そんなもんだよなあ、と、ちょっと寂しい思いをしつつ、私はそのまま八戸線にのり、終点「鮫」駅までやってきました。そして、いざなわれるままに「うみねこ号」なる遊覧バスに乗車してみました。

・・・と!

「おお!知ってる!」。そう、有名な蕪島とそこに群がる、無数のウミネコ!私の記憶では、みゃあみゃあ信じられないうるささで頭上を飛び交ってましたが、その日は暑いせいか、全員、なぜか同じ方向を向いて止まって黙っている、ちょっと目が怖いカラスよりでかめのシュールな鳥たちでした。どうやら、春から夏にかけて蕪島で繁殖するらしく。ということは、やはり私は夏に八戸に確かに滞在していたのだ!と強い確信を持てました。さらに、バスが種差海岸の広い水平線を望みながら走っていくと、「おお!知ってる!(その2)」。あの眼下に見えるごつごつした岩礁、確かに私は、あの場所で生まれて初めて「磯遊び」を夢中になってしたのだった!・・・半世紀前の景色がそのままで残っていて、私の記憶を海馬の底から掬い上げてくれたことに、ただ驚き、そして感激しました。伺うと、関東大震災の大津波もこのあたりはあまり被害を受けなかったらしく、本当によかったです。

そしてその後私は、新幹線の八戸駅とはちょっと離れた「本八戸」という駅付近で宿泊しました。駅に降り立つとそこは、「絶対に半世紀前から変わってない」建物がたくさんある街並みです。病院の位置からして、たぶんこの辺りに当時は住んでいたと思われます。もちろんだからといって何を思い出すわけでもなく、私は淡々とその道をホテルまで歩いていました。

道中、一軒の古いたたずまいのお寿司屋さんの前を通りかかったときです。・・・「ん?」「おお!知ってる!(その3)」。それは、瞬間でした。遠い遠い日の一場面が私の前頭葉に絵となってふわっと浮かんできたんです。

・・・私はその日、乳歯が抜けそうになっていました。生まれて初めての経験です。家族でお寿司屋さんにやってきたものの、歯が気になって、お寿司どころではありません。神経質に自分の前歯を触ってはグラグラ加減を確かめながら、私は何も食べられずにお寿司屋さんのカウンターの椅子に座っていました。

父が「そのうち勝手に抜けるから気にしないで食べなさい」などと声掛けをするのですが、私は頑固に何も食べずに無言で座っていました(注:当時の私は、ほとんど自分の喜怒哀楽を表現しない、しゃべらないこどもでした、ほんとです)。すると突然、カウンターの向こうでお寿司を握ってた大将が「どれ、見せてみな」と私の方に向き直りました。でっかい手が近づいてきたと思ったら、口の中に入ってきて、私のイタイケナ前歯ちゃんを、結構乱暴にグラグラ揺らした挙句、「これ~、もう抜けっぺよ~!ほら!」と大将は、ホントに一瞬にして抜いてしまったのです!「ぐすっ」という不気味な抜歯音(?)が脳内に響き、その後口の中に血の味がして、私は失神しそうになりました。ええ、私はヘタレでした(笑)。

でも、すごいですよね。めちゃくちゃ鮮明に、この記憶が全部よみがえってきたんです。一瞬にして。もちろん、この通りかかったお寿司屋さんが「その」お寿司屋さんではないと思います。でも、この街に来て、お寿司屋さんを見かけたから、しまわれていた、でも私にとっては初めてだった鮮烈な経験の記憶が引き出されたのですね。

ということで、私の、初めて抜けた乳歯がどこかに埋まっているであろう八戸を、これからも心のふるさととして認定してきたいと思います。みちのくおもひで紀行、素敵な旅でした。

 

 

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