ブログ「子育て科学日記」

リスクとベネフィット

初めて行った海外は香港、母子3人で恐る恐るツアーに参加した3泊4日でした。

豚が丸ごと吊るされてる市場の迫力にビックリし、普通の会話風なのに明らかに音量が大きく喧嘩のように聞こえる中国語におののき、アパートの窓から縦に突きだした竿にビッシリ干してある洗濯物にビビり、口を真ん丸に開けて「おのぼりさん」丸出しで歩いてたと思います。

そんな我々一行に向こうからやってくる大きな戸板!!

おっちゃんが一人で巨大な板を我々の行く手を完全に阻む形で運んでこっちに向かって来るのです。と、ツアー客の一人で30代くらいの男性の真ん前にその戸板はやって来ました。避けようと右に出れば戸板も右に、左に動けば左と、執拗に邪魔をするのです。

それが5ー6回繰り返されたでしょうか。

やっと件の男性は戸板から解放され、「なんやろあれ?」とか言いながら歩を進めたその途端、「やられたー!!」ズボンの後ろポケットに入れてた財布が見事に摺られてました。

いやあ、海外っちゃ怖いもんや、お財布はしっかりカバンの底に隠しとかなあかんなあ、と中3の私には、しっかり記憶が刻まれた…はずでした。

が、しかし、その15年後にその「怖い海外」に住むようになって、私は知るのです。財布を摺る人より、財布を拾ってくれる人の方がアメリカにはずっと多いのだ、ということを……おっちょこちょいな私は、幾度となく「お財布、置き忘れてるよ!」「リュックのチャックが開いてて、中からお財布顔だしてるよ!摺られちゃうから、ちゃんとしまって!!」と見知らぬ方々から、注意を受けるのでした。

3月に、思い立ってニューヨークに遊びに行って来ました。折しも季節外れの大雪で、会社や学校も休みになったその日、私たちは地下鉄に乗り、美術館に向かっていました。「着いた!!」と地下鉄を降りようとした時、向かいに座ってたおばあさんが、「大変、落ちたわよ!」と、少し不自由な体なのに、わざわざ自分の席を立って私の折り畳み傘を拾って手渡してくれました。傘もしょっちゅうなくす私ですが、もしその日あの地下鉄内でなくしてたら、その後、じゃんじゃん降りしきる大雪のなかで本当に途方に暮れていたことでしょう。まさに「She saved my life」です。

そんな、ほっとする気持ちにさせてくれるアメリカに身を置くこと自体が、私は大好きなのですが、残念なことに「ニューヨーク? 怖いじゃないですかテロとかあるし、地下鉄とか危ないし。」と断じる日本人はとても多いものです。さらに、「飛行機落ちるし」「言葉、わからないし」と様々な理由をつけて日本にひきこもる。その上、本当にその場に身を置いたこともないのに、本当にそこの人たちと接したこともないのに、テレビやネットの情報のみで知った気になって、海外のことや外国の人を真顔で色々悪く言う同国人たちの顔を見ていると、いつもとても悲しい気持ちになります。

確かにリスクはある。でも、そこに身を置き、五感を震わせることで得るベネフィットはそれを凌駕する。そして、その経験が次回のリスクを格段に減らして行くのです。これを繰り返す結果、年月を減る毎に人を許容する幅がどんどん広がって行き、ベネフィットは無限大に拡大する。要は、リスクを避け続けている限り、狭い範囲でしか人を認められないし、好きにもなれないのではないかと、私は思います。

だから、人っていくつになっても成長できるし、考えることができるんですよね。そのことを、特に若い人たちがもっと知ってくれるといいな、と思ってます。

 

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