ブログ「子育て科学日記」

本当はブラックなスポーツ少年団

今朝、「本当はブラックな江戸時代」という本を読んでたら、江戸の民の貧しい食生活についての話が載っていました。庶民だけではなく武士であっても、食事は基本、ご飯(白米)と香の物(たくあんとか)だけとか、1菜がついてもひじきの煮物くらい。ご飯を炊くのは基本1日1回なので、朝昼晩とお茶漬けなんてこともざらだったようです。
魚が食卓に上るのは月に3日くらい。せいぜいイワシとかだったようです。
まあ、その分江戸市街には超高級料亭から立ち食いの屋台まであって、予算に合わせて色々な外食が楽しめたようですので、きっとハレとケの区別がしっかりできている暮らしだったのだと思います。

その江戸時代の食生活に逆戻りかっ!!という話を最近立て続けに2か所で聴きました。

講演会で訪れた、地理的には遠く離れた町ですが、待ち時間の雑談で全く同じ話題が出ました。
場所はいずれも都会ではなくどちらかと言えば超ど田舎なんですが、その話題とは「スポーツ少年団のコーチが、一食3合のコメを食え、と指導している」というものです。
対象は小学生。野球やバスケットボールやサッカーなど様々なスポーツ競技の少年団で、今ひそかにこの指導法が日本全国蔓延しているらしい。

「3合食べられなかったら、練習させない」
「3合食べつくすまで、寝てはいけない」

あろうことか、その時聞いたある方の息子さんは、ピッチャーとして有望だそうなのですが、「お前は体が小さいからとにかく体を大きくしろ」とコーチに言われ、練習から帰宅後の夜9時から、2時間くらいかかって毎晩3合の白米を胃袋に収めているそうな。
そもそも食の細かったそのお子さんは、毎晩涙ぐみながら、それでもコーチの言うことは絶対なので、一口、また一口と運び続けているそうです。当然寝る時刻はどんどん遅くなり、また胃もたれがするので寝つきもよくない。

2回も同じ話聞くと、恐ろしくなってきます。
いや、これって虐待だって。
こんなことしても脳も体も育たないしって。
ましてやまともなスポーツ選手なんて育たないって。
何を根拠にこんなことをしているコーチたち。
そして、そこに声を上げない保護者たちの思惑って・・・?

江戸時代、白米ばかりを食していた市民に蔓延していた病気は脚気です。
ビタミンB1が不足することによる神経炎。
重症化すると命さえ奪われます。
庶民のみならず、13代家定、14代家茂など、将軍も罹患し命を落としました。
原因は胚芽を落とした白米のせいとも言われていますが、ビタミンB1は、豚肉や野菜などたくさんの食物に豊富に含まれているので、前述のような、江戸市民のバランスの悪い貧相な食生活全体が原因と考えられます。

だから、現代の生活ではまず起こることはない・・・・と信じていた私たち小児科医の常識が、近い将来崩されて、スポーツ少年少女たちに脚気が蔓延しそうな予感です。

そんなことが起こる前に、「本当にブラックなスポーツ少年団」を私は黒船で、ゲベール銃で、駆逐したい!!と、本気で怒りを覚えます。

ページの先頭へ