ブログ「子育て科学日記」

何が見えているのだろう

昨日、電車に乗っていました。
向かいに座った母子連れはとても静かでした。
女の子は、たぶん年中さんくらいの幼子なのにだだをこねることもなく、黙々とジュースを飲み、お菓子を食べ、本日のお出掛けの戦利品とおぼしきキティちゃんの絵の付いたお皿をためつすがめつ眺め、これまた本日の戦利品とおぼしきキティちゃんの塗り絵を丁寧に塗り、そして電車を降りて行きました。

お母さんの声は聞きました。
「あ、こぼしちゃうよ(愛らしいことに、ストローで飲んでるのに、彼女は一生懸命コップの方を傾けていたのです)」「これ、食べる?」「塗り絵、する?」
…ん?と思ったのは、最初から最後まで、この女の子の声は一切聞くことができなかったからです。

さながらムーミンに出てくるミーのように、大きな瞳をギョロギョロさせながら、不機嫌な表情満載で回りの大人たちの様子を伺ってるその子を見て、先日展覧会に行き感動した草間彌生さんを思い出しました。

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幼少期から他の人には見えぬ幻影に気づき、惑わされていた彼女は、9才で本格的なデッサン(と私には思えました)を鉛筆で描き、その上に一面の水玉を撒きました。
今、世界の注目を集める一流アーティストになっても、そのモチーフは変わらず彼女の芯を貫き、キッチュでポップな色合いの、息をのむ迫力で迫り来る圧巻の連作パネルにも水玉はふんだんに撒かれています。

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宣伝ポスターには、88歳には絶対に見えない強い眼力のお写真で写ってて、それがまさに不機嫌なミーそのもの。
子どもの心のまま80年経った、そんな方なんだなあと、思いました。
ですから、目の前に座る、喋らないけど好奇心の光を宿した瞳を持つその女の子に私はとても興味を持ちました。
彼女には、一体今、何が見えているのでしょうか?
それを何かの形でアウトプットする日が、いつか来るのでしょうか…
通りすがりの、とても印象に残ったひとコマでした。

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