ブログ「子育て科学日記」

五感の刺激はホンモノから

皆さんこんにちは。
今日は土曜日、私は車中の人。
そして、ブログの更新…とルーチン化している今日この頃です。
本日は岐阜県に伺います。
とってもよい天気、新幹線ご乗車の皆さんも本当に楽しそう♪

……と、今、私の隣の席に一人の女性が乗車して来ました。
タフタっぽい光沢のある、ワインカラーの生地でできたスカートがステキだな、というのと、(自分のことは、全く網棚に上げて)土曜日のこんな朝早くから一人で新幹線乗車って、可哀想に、お仕事かしら!?、という超大きなお世話的考えでチラチラ観察してたら、その女性、やおらiPad取りだし、でかいヘッドホンつけたと思ったら、その画面にピアノの鍵盤が現れた!!

そして、お膝の上に置いた楽譜見ながら、弾いてる~!

いや、知ってはいるのですよ、こういうアプリがあって、今や楽器を持たなくてもどこでも演奏や作曲ができるんだって、患者さんに教えてもらったことあるので。
でも、こうやって実際に、新幹線車内で他の人もたくさんいる中で、ピアノ弾いてる人見ると、こりゃあすごいことだなあ、便利だなあ、と思うわけです。
でも、便利ではある一方で、こういう電子機器だけに囲まれて暮らす子どもたちの脳がうまく育たないのでは、という危惧もとても強く感じます。

うちの家にはアップライトのピアノがあるのですが、時おり調律師のKさんがいらっしゃって調律をかけてくれます。
音叉から出る正確な音程を頼りに、微妙な差を耳だけで確認しながらひとつひとつ弦の調整を埋めていく作業は、「究極の職人的作業です。」といつもKさんはおっしゃってます。
Kさんは、浜松にある専門学校で、それこそ血のにじむような訓練を受け、厳しい試験を受けて合格して調律師になった方です。

温度や湿度で少しずつ膨張や収縮する木材の影響を受け、張りの度合いが変化する、まさに生き物とも言えるピアノを、愛情深く丁寧に、根気強く調整してくれるその姿を見るたびに、あ~、ピアノ買って良かった、下手くそだけど、練習しようって思います。
ゴールデンウイークに久々に空いた時間が出来たとき、真っ先に思い浮かんだのが「思いっきりピアノ弾きたーい!!」でした。
家の者が出払った隙に(笑)、蓋を開け、家中の窓を閉め、思いっきり生音で弾く快感♪
鍵盤を押さえるときや、弦が叩かれるときに出る鈍い音は、研磨された木材の音そのものの素朴さ、そしてそれに重なる共鳴音は、私の抱えるストレス、憂いを宇宙の彼方に飛ばしてくれる広がり。
サイレントモードにしてヘッドホンで聴く音とは、まるで「五感への刺激度合い」が異なります。
「ホンモノの音」を知らないまま、電子の奏でる音をピアノだ、と思い込む子どもが増えることは、恐ろしいことですよね。豊かな五感からの刺激こそが脳を育てるのに…

Kさんが、先日来られた時に寂しそうにおっしゃってました。
「高いし、嵩張るし、音は大きいし、こうやってメンテナンスにも費用がかかるので、めっきり本物のピアノは売れなくなって、最近は電子ピアノにとって代わられてしまってますよね。私の仕事もいつまで続けられるか…」

最近お子さんが生まれたKさんの商売が未来永劫続きますよう、みんなが「本当に大切なこと」に気づいてくれることを祈ってます。

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