ブログ「子育て科学日記」

祈り

昨年の3月に熊本で講演会をさせていただきました。
学会等で何度か訪れたことがありましたが、昨年伺ったのはちょっと鄙びた町はずれにある大学で、ローカル線の風情や講堂から望む緑豊かな遠景に感動しました。
暖かく穏やかな方たちにお会いできて、私はとても良い時を過ごさせていただきました。本当にありがとうございました。

一昨日の夜、緩やかで長い揺れで目覚めました。
「遠くで地震があったのかな?」と思いつつ、そのまままた寝てしまったのですが、一夜明けて驚き、そしてまた一夜過ぎて更なる大きな災害の報せに、心穏やかではいられません。

被災地となってしまったかの地の皆様、心よりお見舞い申し上げます。
今は大変な心持ちでお過ごしのことと思います。
電気や水道も絶たれ、冷え込む夜を過ごすのは本当に心細いことでしょう。
一日も早く、元の安全な生活に戻れますようにお祈りしています。

私たちは5年と約1か月前に被災しました。
高速道路も閉鎖し、信号機もすべて光を失っている中、大学からやっとの思いで迎えに行けた小学校で、残っていたのは娘を含めて3人の児童と先生たちでした。
ご自分の家族の心配もあるだろうに、子どもたちを最後まで守って下さっていた先生たちの、今思い返しても涙が出るほどのありがたさ。

帰り着いたわが家には物が散らばっていて、停電していて断水していました。
なんとかお湯を沸かして冷蔵庫にあったご飯を蒸して真っ暗な中で食べようとしたその時、娘が
「お母さん、お誕生日おめでとう。これ、なんだかわからないと思うけど、私が作ったの。」
と渡してくれた手作りの小物入れの丸くて暖かい感触。
怯えていた犬を連れ出して散歩した、明かりの消え去った町の静けさ。
見上げた空に、見たこともない数またたいていた星たちの落ち着いた光。
誰よりも真っ先に心配してくれたのは、異国に住む友人たちのメール。

今、思い出されるのはそんな断片的な場面。

地球の、そして宇宙の営みの上に脆弱な足場しか持ちえない、とても非力な私たちだけど。
いや、それだからこそ、人が暖かくて、地球と宇宙が静謐で、そして私たちは生き続けるのでしょう。

どうか被災地の皆様にも、いまこの瞬間、星の光が、人の温かさが、降り注いでいますように。

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