ブログ「子育て科学日記」

わからない!は大事だと思う

 以前勤めていた大学で、教授に「お前はびっくりするくらいきっぱりと「それについては全然わかりません」って言うやっちゃなあ」とお褒めの言葉(?)をいただいたことがあります。「ふつうはわからなくても曖昧に笑ってごまかすとか、ピントがはずれてもとりあえず答えようとするもんだ」と。
 今学生を教えていると、この言葉を思い出して、今なら「なるほど」とうなずけます。
多くの学生はこちらの質問に対して曖昧な顔をするだけで、「わかっているのか、わかっていないのか」、全くわからないからです。その中で、間違っていてもなんとか答えようとする学生は、むしろえらい!と思います。

多分、「わかりません」という言葉には「教えてください。知りたいです」が隠されています。少なくとも私はそうです。
以前も書いたかもしれないのですが、学生だけではなく、今の日本人って全般的に「知りたい!」という気持ちが低下しているように思えます。だから、勉強はして点数を稼ぐことはできるけど、それを実生活とつなげて応用する力はとても低いのです。

 あるとき、某・超有名大学生の子と話をする機会がありました。偏差値でいうと70以上もたたき出すような、医学部の学生です。1時間ほど話したあとに私は、その子の生い立ちから、これまで何回転居したか、小学校の時にはどんな子と遊び、いつから塾に行ったかなどすっかり知り尽くしてました。親御さんの職業はもちろんのこと、乗っている車、家の間取り、兄弟の学校、もちろんその子の交友関係や聞いている音楽のミュージシャンの名前まで、かなり膨大な個人情報を入手していたのです。でも、その子と別れた後でよく考えてみると、彼女は一度も私について質問をしなかったので、多分彼女は私について、名前以上の情報は全く得ていないと思われるのです。
 この情報格差について、皆さんはどう思われますか?「でも医学部の学生なんでしょ。テストの点はちゃんと取れるだけの好奇心はあるのでは?」「別に成田の年齢を知っても(笑)、彼女が医者になるのになんの関係があるの?」と思われるかもしれません。でも、私の経験でだけ話せば、私はこれまでほとんどがこの「わからない、知りたいから教えて」トークで、大学卒業後の人脈を培ってきました。話してみると、思いもかけない接点があったり、知らないことを教えてもらっていつの間にかその世界にどっぷり引き込んでもらったり、と書物からだけでは得られないたくさんの情報を得ることができました。

 点数を取ることを目的にした勉強だけでは、好奇心は育ちにくいです。そして書物に書いてあること以上の情報は入ってきません。いくら良い大学を出ても残念ながらそれほど目覚ましい活躍をできない社会人はたくさんいますが、私に言わせればほとんどは「わからない」が言えない大人たちです。その人たちは、大学レベル以上に伸びることはまずないからです。
自分の子どもをそういう「残念な大人」にしないために大きな声で「わからない!」と言えるように育てましょう。もちろんその前に大人から素直に「わからない!」を言いましょうね。
 
 

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