ブログ「子育て科学日記」

やっぱり「人間体験」させましょうよ・・

最近、講演会の後の質問でよく出るのが、近年流行りのタブレット(ipadなど)を子どもが使うことに関する質問です。
子育て中の親御さんから、「2歳の子どもが器用にipadを操作して、どんどん動画を見て楽しんでいるんです」とか「3歳の子が知らぬ間にドイツ語の歌を歌うようになったんです」とか「うちにタブレットが来たおかげで、5歳の子も42歳のパパも15歳のおにいちゃんも皆が同じように使えるものが初めてできて、ゲームの話で家族のコミュニケーションが増えました!」などなど・・
で、必ず「こういうのは脳にいいんでしょうか?」で質問は締めくくられるのですが、そのニュアンスは多分に「いいですよね?ね?」の響きが込められているように私は毎回感じるのです。
ねね?うちの子、こんな年齢からITを操作してグローバル化が進んでるんですよ、的な(笑)。

そんな親御さんの「プチ自慢モード」に水を差すようで誠に申し訳ないのですが、やはり私には低年齢から二次元の光媒体へ過度に子どもを暴露する状況は出来る限り避けてほしいなあ・・と思います。
二次元の物体と三次元の物体の脳の捉え方は違います。
赤ちゃんにテレビモニター越しに実の母親が語りかける画像を見せてもあまり脳は活性化しませんが、実際に目の前に母親が立ち、語りかけると強烈に反応します。
人間の脳は、人間が刺激するから育つのです。
赤ちゃんをみれば人は声をかけ、笑いかけます。泣いていればおむつを替え抱っこをします。
有史以前からそうやって人は育ってきたはずなのに、そんな当たり前のことすら現代人は忘れかけてしまっているのでしょうか?

聞けば、「小食なのでなんとか食べさせようと」子どもの視線を目の前に置いたipadの動画で引き付けておいて、その間に口にご飯を押し込んでいる家庭もあるようです。多様化し汎用化されたメディアは今、様々な形で育児を変態させていっているようで、私は恐ろしく感じます。

先日、「レ・ミゼラブル」のミュージカルを観に行きました。
もう何度目?というくらいストーリーも曲も全部わかっているのに、やっぱり胸に押し迫る感動で泣けてしまいます。
舞台やライブの場に身を置くと、その時その場所にのみある「気」が五感すら越えたところから脳に刺激として入ってくるような気がいつもします。
この、「人間体験」を超える脳育てツールはないんじゃないかと私は思っています。
一緒に行った娘は、興奮のあまり帰りの売店で英語のレミゼの本を買い、帰りの電車で一気に読んでいました。
あんなに集中して英語を読んでいる姿を見たのは初めてです。
というか、英語読めたっけ?と驚きました。
そう、脳はこうやって育っていくんです。きっと。

今、無制限に子どもにメディアを与えている親御さんたち、ちょっとそれを減らしてその分「人間体験」をさせることを考えてみませんか?

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