ブログ「子育て科学日記」

本当に「生活」が脳を育てるんです。

以前より、「ちゃんと寝て、ご飯をしっかり食べて、からだを動かす」ことが脳育てのもっとも肝です、というようなことをいつもいつも言ってきました。キャッチ―な言葉でいえば「早寝早起き朝ごはん」になるわけです。
実際に子どもたちを臨床(医療)で見ても、教育現場で見ても、そして自分自身の子どもとその友人たちを見続けてきても、はたまた、脳科学的な実験・実践結果を見ても、それは本当に真実だ、と胸を張って言えます。

だけど、このごろ特に「あれ?もしかして、今の子どもたちの脳育ての問題を引き起こすもとである「生活習慣」って早寝早起き朝ごはんだけじゃないのかな??」って思い始めているんです。

あるとき、ある子どもと話をしていて、その子がおけいこ事の送迎をお母さんにいつも車でしてもらっている、と言ったので「そうなんだ。じゃあおけいこ事の行き帰りはいつもお母さんとたくさんお話しができるんだね」と何気なくいったら「ううん、全然話なんかしないよ」というのです。
「じゃあ二人ともだま~って往復40分過ごしているの?」と聞くと「だってテレビ見てるもん」。
すみません。私、車にカーナビがついたのがつい数か月前で、しかもまだ一度もテレビモードにできたことがなく、ナビも使いこなせてないので、全くそこに思い至りませんでした(笑)。

そうなんです。今多くのご家庭では、車に乗っているときすら、テレビがつけっぱなしなんです!
もちろん家では食事の時もリビングでくつろぐ時も、朝も夜も、眠っている時間以外ず~っとテレビがついている、なんてことは珍しくないようです。
この事実は、まともなテレビがまだない(地デジ化も厳密にはできてない)うちの家の状況からは、ちょっと想定外でした。
そして、これがごく普通の「生活」だともし皆さんが思っているのでしたら、それは子どもの脳がちゃんと育たないのは当たりまえだなあと思ってしまうのです。

だってテレビから発される強い光と音は、脳の後頭葉や側頭葉は刺激するけど、最も人間らしさが詰まった前頭葉はまったく刺激しないんですから(これは繰り返し実験的に証明されています)。
言葉や、論理的思考や、思いやりが育つためには人間対人間のコミュニケーションが絶対的に必要です。
でも、いくら大人に話かけられたとしても、強いテレビの刺激に血流を奪われている脳に働きかけられるはずがありません。
そういう生活が繰り返されている家庭の子と、基本的にテレビを見ないで食事時にたくさん味わい、香りを楽しみ、言葉を交わす家庭の子では、一年365日で決定的な脳の育ちの差になることは明らかです。

そりゃあ、私もテレビを見始めると結構引き込まれるし、消せなくなってしまいます。
独身時代はドラマにはまったこともあります。
でも、それだからこそ、子どもの脳の発達のためには、親がきちんとこの刺激をコントロールすべきだと思って、子どもが乳幼児のときには、私たち大人ががまんして、できるだけテレビを遠ざける生活をしました。

だからうちの子どもは、それほどテレビに固執する子どもではなかったのですが、実は一度だけ小学生のときに、NHKの朝番組を見たいということで、朝ごはんを食べながらテレビをつけていた一時期があります。
ところが、これを開始してわずか1週間で「これは絶対だめだ」ととりやめになりました。
だって、今まで20分で食べられていた朝ごはんがなんと毎日食べ終わるのに40分もかかるのです!
子どもは画面に視線が釘付けになってて、しばしばその動きが止まるお箸は、機械的に動いているだけで味もにおいも全然わかってないのが丸わかり・・・
これを毎日続けていたら、絶対に脳が育たない、どころか退化する、ということが明らかにわかりました。
そこで、ぶうぶういう子どもに厳然と、ごはんの時にはテレビは禁止、ごはんは五感への刺激+言葉を交わして前頭葉の刺激だよ、と宣言いたしました。

その代り、今うちの家では朝、必ずFMラジオを聴きます。
J-waveの別所哲也さんの番組のさわやか~なお声を聴きながら、朝日をいっぱい浴びて朝ごはんを食べるとき、最高に幸せな気分になります。
もちろん、食事のにおい、味、暖かさ、なんでも刺激として入ってきます。
そして別所さんの話題に子どもと突っ込んだり、かかった音楽を口ずさんだり、あるいは学校や職場のおもろい人の話題で盛り上がったり、たまにはトレーニングとばかりに英語討論が始まったり。
私は「生活習慣」ってこれまで早寝早起き朝ごはん、ってばかり唱えてきましたが、「どんな場所で、どんな環境で誰と、何をしながら朝ごはんを食べているの?」っていうことも「生活習慣」の一つとしてきちんと考えなければいけないのだな、と思います。

そして今、私は本当に声を大にして言いたいのです。
本当に「生活」が脳を育てるんです。って

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