ブログ「子育て科学日記」

硬い子考2

今日も引き続き「硬い子」の話。最近「こだわりのラーメン」とかいう使い方が多くなってきて、一般に「こだわり」という言葉が浸透したせいか、よく親が自分の子供を「こだわり」と表現する場面に出会うことが多いように感じる。たとえば、先日デパートの子供服売り場横のトイレで大泣きしている3歳くらいの子供のことを母親が父親に「いつもここへ来た時に入る個室に誰かが入っていて泣いてるの。この子のこだわりだからねえ」と言っているのを耳にした。また、あるときは「この子は青にこだわっていて、青い服以外は絶対にイヤだと言って着ないんですよ」と言っているのを聞いた事もある。私が驚くのは、いずれの場合も困った風、というよりはむしろ「この年にしてこだわりをもっている崇高な人間なのよ、この子は」という自慢のニュアンスが感じられたことである。われわれ小児科医にとって「こだわり」とは、ある種の発達障害などでわりと早期から見られる症状のひとつであり、どちらかといえば、ではあるがネガティブなイメージがあるからである。この、早い時期からの親の「こだわり尊重主義」と「硬い子」の増加というのはもしかすると因果関係があるのではないか、と私はひそかに思っている。「トイレの目的はおしっこをすることであり、それはお気に入りの便器でできればそれに越したことはないが、使用不能な場合は我慢することも目的を達成するためには大事だ」とか「青い服はすべて汚れているため洗濯に回っているので、今日はここにあるピンクの服を着よう。ほらピンクも似合うではないか」とかいう本当に細かいことから、親が一つ一つ教えていくことによって、もっと先に社会に出たときに「しなやかに」生きていく能力が身につけられるのではないだろうか。

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