本好きな子は親が作るの?
昨日、某大手出版社の方の講演会を聞く機会があった。児童書、特に古典に造詣の深い方で、その知識から概説される児童書の読み取り方には、なるほどと思わされる点も多くあり、大変ためになった。 私が少し違和感を感じたのは、その方が「子どもを本好きにするかしないかを決定するのは、親、特に母親の責任です。質の悪い本を与えてはならない。良書のみ選んで与え続けなさい」という意味のことを繰り返し強調しておられた点である。レジメに「良書」のリストをつけて下さっており、確かにそのリスト上の本は私も愛読した名作ばかりであった。しかし、私は個人的にはこういう考え方には反対である。むしろ、良書も悪書も含め、どんな本でもいいからあらゆる本に子どもを暴露することこそ、子どもの自発的な本好きを形成すると信じている。あらゆる刺激を頻回にたくさん与えてこそ、脳は発達するという脳科学の観点からも、たくさんの本を目にして、読んで、聞いて、さわることから子どもの脳は自発的に自分に役に立つもの、好きなものを選び取る力を得ていくのだと思う。ゾロリだってゆうれいレストランだってマンガだって含めて、もちろん「良書」も織り交ぜてたくさんの本をただ、どんどん与えることがいいんだよ、と私ならお母さんたちに伝えたい、とおこがましいことではあるが思ってしまった。最近子どもにチョコなどの甘いお菓子を「与えないことにしている」お母さんをよく見かけるが、やはり「子どもに虫歯を作ってしまうのはお母さんの責任です!」とどこかであおられたせいなのだろうなあ、と思う。でも、そういう風に育てられた子どもたちが、お母さんが見ていない場所で、この時とばかり異常な勢いでチョコをむさぼり食べているのを目の当たりにする機会も多くあるのである。「良書」しか読むことを許されずに育った子は何を隠れてむさぼり読むのであろうか。