わかるって楽しいを教えたい
なかなか時間が取れないうちにすっかり秋、10月になりました。子供達の制服も冬服に変わりましたね~。皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、私は相変わらず大学の先生を本業として活動しているわけで、前期、後期の授業を滞りなく進めることが私にとっては最も大事なお仕事です。
大学の授業が半期で15回、一年で30回の講義で構成されていることを皆さんはご存知でしょうか?
以前は大学や教員の裁量に任されていた部分も多かったのですが、最近は文科省など行政からの指導が強化され、半期で15回の授業を抜かりなく行うよう大学もきっちりカリキュラムを組んでいます。
90分の授業を15回するって意外に大変で(笑)、特に大人数のクラスは一方的になりがちで進行が難しいなと思います。
でも、最近私なりに工夫しているのは、できるだけ学生達の自発的な発言を待つこと。せっかくたくさんの授業時間を与えられたのだから、ゆっくり時間を取って問いかけの答えを出させようかと。
そうすると、「与えられることに慣れていて、自分から考える力に乏しい」とされるゆとり世代の学生達が、次第にとっても機知に富んだ発言をするようになるんです。
最近も、ある授業で血圧計を使って実際に血圧を測る実習を行ったのですが、そのあとで血圧の測定単位であるmmHgって何のこと?と問いかけてみたんです。
最初指名した学生は「ミリメートル、とヘモグロビン??」と答えました。周りの学生たちも「あ~なるほど!」とうなずき、それから2-3人指名しても皆「私もヘモグロビンだと思います」と答えました。
これまでは私が「いらち」(関西弁、せっかちなこと)のこともあり、2-3人に聞いて正解が出なければすぐ正解を教えていたのですが、せっかく授業回数があるし~と「ヘモグロビン、じゃあないなあ~。ちょっと考えてみて」とのんびり学生たちの考えるままに待ってみたんです。
すると、少しずつ前後の学生たちで話す姿が見え始め、しばらくしてどこからか「水銀・・・?」というつぶやき。
「お!いいこと言ってる子がいる。もう一回言って」と促すと「水銀・・ですか?」その途端、学生たちが一斉に「あ~~!!水銀、水銀じゃん水銀があったよ血圧計に」「㎜ってあの長さ?」「音聞こえた時にみた目盛あるじゃん、あれの長さ?」
そう、実習で見た水銀柱のイメージと、mmHgがピタッと一致した瞬間だったんですね。
そこで、血圧計のしくみから始めて、血圧って何?ということを話すと、学生たちの脳みそにすとんと落ちる音が聞こえます(笑)。
その教室にいるすべての学生が「そうか!わかった!」という顔になるのを見るのはとても楽しいものです。
ゆとり教育って本来はこういう時間をたくさん作るための教育要綱の改訂だったはずなのに、結果的には全然考えることのない子ども達を多く生み出してきてしまいました。
もしかすると、それって指導する側のゆとりのなさが原因なのではないかな、と私自身の経験から思えます。
時間的なゆとりもさることながら、教員側自身が「わかった!」の嬉しさを知っていなければ絶対に子ども達にそれを伝承することはできないですものね。
なので、小学校・特別支援学校の先生になっていくうちの学生たちには絶対にそれを知っていてほしいと思って、私なりに授業を展開しています。
まあでも実はこんな偉そうなこと言ってられるのも学期始めの今だけなんですけど(笑)。
最初の方でこうやってゆっくり学生の反応を待ちながら授業をしていると、最後はやらなきゃいけない単元が貯まりまくってしまって、大慌てで早口の講義で締めくくる羽目になるのが例年のことです(笑)。
とりあえず、今学期も頑張りましょう!